平成の終わりに友と会い、令和のスタートに立つ。

久し振りにPCに向かってキーを叩く。昨日は20年以上合っていなかった友人と再会するため横浜へ。甲府駅から横浜駅直通の高速バスに乗り込む。30年前、25歳のときから5年間、僕は横浜でひとり暮らしをしていた。元々田舎育ちの私にとって初めての都会暮らし。多くのTVドラマや歌詞に歌われてきたその街の風景に僕の胸は躍っていた。しかし現実と理想の差は大きく、できるだけ低い家賃で借りたワンルームは高速道路と隣接する街道沿いに立つ、日中も太陽の光が差し込むことのない薄暗い部屋だった。車の通りは夜も眠ることなく続き、そのノイズが鎮まることはない。たまに破裂音を轟かせながら数十台のバイクが1時間ぐらいかけて夜の街道を走りすぎる。そんな都会の洗礼に描いていた楽しいイメージは遠のいていった。なんとか新しい生活を楽しむため、僕は自転車を買った。ロードバイクの機動性を生かしてこの街を思うままに走りまわろう。でも僕の行く先は人が集まる場所ではなく海が見れる静かな港。倉庫が立ち並ぶ大黒ふ頭だったり、本牧ふ頭のヨットハーバー。車の騒音と離れて穏やかな風や波の音を聞いているのが好きだった。

甲府から乗った高速バスが終点に近づき、新しくなったみなとみらいを通過した。再開発であの当時はほとんどが、まだ平地のままだったが、今では様々な高層ビルが立ち並び洗練された街の雰囲気にあふれていた。バスの横をジョギングで通りすぎていくランナーをみながらなんとなくここに住みたいと思った。憧れて通ってみたジャズのライブハウスやカウンターバーもあの頃はどことなくぎこちなくて居心地の良さを感じる事もできなかったが、歳を重ねた今だからまたあの時間に浸ってみたいと思う。

バスから降りたら外は寒空、冷たい雨がポツポツと落ちてきた。時間はちょっと早いけど、スマホの地図アプリを頼りに迷いながらも今日のお店、居酒屋・満月に辿りつた。

 お店に入る手前では店員さんが立っていて予約の確認をしていた。12時の予約をしていたが、その日はすでに満席となっており予約の無いお客さんにお断りの説明をしていた。「予約しておいて良かった」と安堵しながら店員さんに連れられて2階の掘りごたつの部屋へ。案内されたテーブルにはすでに二人並んでジョッキを交わす姿があった。「久しぶりだな、二人ともどんな風かな」とすこし緊張しながらそのテーブルを覗く。先の二人も気づいたようにこちらを振り向いた。普段、遠くが滲んで見える僕はその二人の顔を見て「なんだか、すごく変わったな?」と思い半分、不思議そうな感じで「こんにちは」と挨拶すると向こうから「違いますよ」という答えが返ってきた。「ぜったい、そうだよな。」全くの別人。25年振りに合う友人とまったく似ていない二人を前にして半分自分の記憶を疑ってしまったが、そんなはずはないと自分のアホさ加減に間違えた店員さんと大笑いしながら正しい席へ案内してもらった。期待にすこしドキドキしながら待っているとそこに今度は本物の二人が現れた。「そうそう、その顔、その声だよね」記憶と重ねながらいろいろと昔の事を語り始めた。U先輩。顔は以前より少し痩せた感じだが、独特のなまり口調とやさしい笑みで話しかけてくるその姿は今もかわらず、そしてもう一人の友人Kはまわりをリードする話しの上手さと包容力、そしてその話題の豊富さで話をぐいぐいとひぱっていった。3人の近況や仕事に関する話の後、これからのやりたい事について話が進んだ。友人Kが話す「キャンピングカーを買ってゆっくり日本全国を旅する」という話に二人も賛同し盛り上がるとあっと言う間に予約の3時間が過ぎた。帰りが夕方6時のバスでまだ時間が空いている僕に友人Kがカラオケに付きあってくれた。僕としては前から友人Kとカラオケに行き、あの頃よく彼の車で聞いたサザンオールスターズをいっしょに歌うことを楽しみにしていたので、それは最高の時間だった。「夕日に別れを告げて」僕が一番歌いたかった曲。でも今回は曲名が思い出せずリクエストを入れることができなかった。これは次回のお楽しみ。

楽しかった時間も過ぎ、次の再会を約束して友人Kと別れた。

横浜ビブレをぶらっと探索して帰りのバスに乗るまえにラーメンを食べることにした。数多いお店の中で選んだのは黄金色に透き通ったスープと固めの細麺、軽く炙ったチャーシューはとても柔らかく、味もしっかり染みた手間暇かけた一杯。ゆずの香りとまろやかな油でつるつるさっぱりとっても軽い感じで食べれてしまう。お店もおしゃれな雰囲気で女性にも人気のお店だった。スマホでお店を探しているときは気づかなかったが、2年前、このお店が開店したばかりのころ、ここのラーメンを食べていた事を思い出した。そうそう、前も食べたよな。過去の忘れていた記憶に引き寄せられて再会したラーメンに僕はとても幸せな気分だった。本当にあっさりと食べれてしまうので、横浜に来た際は是非立ち寄ってください。

帰りのバスの中。今までの自分の中でやってこなかった事、人に会いに行くと言う事に気づき、その大切さを実感した。機会がないまま通り過ぎていた時間、自らの一歩を踏み出すことでその 世界は作りだすことができる。そしてまた会いに行こう。友と会い平成の彩を振り返り、そして令和のスタートラインに立つ。さあ、新しい自分に会いにいこう。バスが夜のトンネルをくぐりぬけていった。(終わり)