春が来て入園式。初めて家をでてみんなで歌を歌ったりお遊戯したり、かけっこしたり楽しい幼稚園。のはずだったがその時から僕と幼稚園バスとの戦いが始まった。幼稚園のお迎え場所からその園まではマイクロバスでおよそ20分、バスに乗り込むとシートの独特な匂いが鼻をつく。走り出して5分、バスの揺れにだんだん気分が悪くなる。そう、僕は小さい時、過度の乗り物酔いをしてしまう子供だった。電車はまだマシだったが、バスは大の苦手。毎度、毎度すぐに気分が悪くなってしまうので席はいつも引率の先生のすぐ後ろ。朝から酔ってしまうので着いてからも元気が出る訳がなく、自然とおとなしい子供になった。家にいる時が一番楽しい。園に行くのは最悪。だから朝起きて少しでも具合が悪いとぐずってずる休み。安心できるひととき。そんなある日、いつもの様に行きたくないとぐずっていたら、とうとう父が鬼の形相で立ち上がり僕を掴み上げて家の中から外へ1メートルぐらい放り投げた。投げ飛ばされた勢いにびっくりして泣き喚く僕。幸い大怪我はしなかったが、父の怒りはすぐには治る様子もなくここからは泣きで勝負。うちの父は言葉で諭すことはなく、許容限度を超えると雷が落ちる。とても怖いので自然と父親の様子を伺い家の中でもおとなしい子供になっていった。しかし父も子供を虐待するような悪い人ではなかった。いつもはおもちゃを買ってくれたり、サイクリングに行ったりしてくれる。しかし言葉で説明してくれる人ではなかった。普段はTVで野球とプロレスに夢中。TVを見ている時、ほとんど話はしない。そんな家で育った僕は自然とTVの世界にはまっていった。(続く)