擬態

扇風機の音だけが回る部屋でふと目を覚ます。うかつにもしばらく眠ってしまったらしい。生ぬるく湿った風が僕の耳元を通り過ぎていく。目覚まし替わりに軽い筋トレをしてお風呂に入った。今日はこのまま寝てしまおうか。そんな誘惑を振り切るように今日も僕はPCの扉を開けた。ここまで書いてみて指が止まる。しばらく休止していたため題材が浮かんでこない。すると、ある日雨あがりの日に家の壁に張り付くカエルを見つけた事が頭に浮かんできた。ベージュ色の壁に擬態した白いカエル。その形からよく見る小さなアマガエル。普段はたぶん緑色だけどその擬態した姿に僕はとても驚いた。詳しいメカニズムはよくわからないがまわりの色を感じて意識的に自分の皮膚の色を変えることができるとはものすごい能力だ。人間の世界で考えればそれは洋服を纏う事と同じなのかもしれない。ひとそれぞれに違う洋服を着ているように見えて遠くからみれば、それはその社会の求める姿に溶け込むための装いなのかもしれない。あまりにその社会から外れた姿でいればまわりから攻撃を受ける。人間同士でも争いをさけるため自分を隠しながら擬態している。そんな自分の姿かもしれないカエルの姿をカメラに残したつもりだったのに、その写真を見つけることはできなかった。このカエル、きっと写真の中でも姿を変えひっそりと息をしているのかも知れない。(終わり)