安倍総理からの「不要な外出禁止令」ととれるお願いがでる前の先週、特別な予定もない僕は映画館へ行くことにした。よく考えてみれば「多くの不特定多数の人と閉ざされた空間で2時間を過ごす。」まさに濃厚接触の環境に自ら身を投じるという不用意な選択をしてしまった。
今日はどんな映画を見ようかな。選んだ映画のタイトルは「スキャンダル」。アメリカではアカデミー賞の多くの部門にノミネートされ、ハリウッド3大女優の共演、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を日本人のカズ・ヒロが初めて受賞した話題豊富な映画だ。期待を胸にホールの扉をくぐり、客席を見上げると、まさか、ガラーンと空席が並んでいた。「今日は貸し切りだね」。ほとんど人影がない客席の照明が消され上映が始まった。すると遅めのランチのせいか、まぶたがすごく重たくなってきた。普段より大きなボリュウームで流れているセリフがしだいに頭から遠ざかり、やがて僕は眠りにおちた。時々、目を開けようと悪あがきするが、すぐに暗闇の中へ吸い込まれてしまう。意識が戻ったときにはストーリーもクライマックス、上映時間もあと30分を残すのみぐらいの時間だった。全米を揺るがした巨大TV局でおきた実際の事件を再現、名女優ニコール・キッドマン主演の話題作をあっさりと寝過ごしエンドロールが流れて客席が明るくなった。見事にガラガラな空席が、寝過ごしてしまった僕のむなしさをより一層表しているように思えた。
ホールから出る際に、「こんなに空いていたのは、やはりコロナウイルスの影響ですか?」と映画館の人に聞いてみた。「作品や時間帯によってはいつもと変わらないですよ」という答えだったが、やはりすこしづつ影響は広がっているんだな。って思った。そして今週、状況はさらに深刻なものへ展開していった。この悪夢が早く鎮静化して平穏な日々に戻ることを切に思っている。(おわり)